わいワイ がやガヤ 町コミ 「かわらばん」

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2014年2月10日海ぼうず?! (その1) 時間・空間・仲間

心地良い関わりの中には、3つの 〝間〟 が存在するという。 時間、空間、仲間である。この3つの絶妙なバランスによって、関わりを彩り、互いのエネルギーを高め合うともいわれる。
18歳の時に波乗りに出会って、すっかり 〝海ぼうず?!〟 の如く、海の虜になってしまった夫。〝命の締め切り日〟 を言い渡された手術後からも、天に導かれる3ヵ月前まで海と向き合っていた。そこには、どんな 〝間〟 に包まれていたのか。そっとひも解いてみたい…。

12.久しぶりの海との対話。どんな想いを
馳せているのだろうか。

海に会いに行く?!時は、寝坊スタイルもどこへやら…。いえいえ正確には遠足前の子どものように、前夜からワクワクして眠られず、そのまま海に直行。
大海原では元気の素でも浴びてきたかのように、意気揚々と帰ってくる。海での出会いやハプニングを土産に、話はきなかった。

12すっかり顔なじみになった朝市のおじいちゃん、おばあちゃんたちと。

そんな海の存在は、まだ波乗りはできない身体である夫を、セーターやジャケットに包(くる)め冬の海辺に立たせていた。
道中には、何度も足を運んだ 〝農家の朝市〟 への寄り道も欠かせない。いつもなら、おじいちゃんやおばあちゃんとの他愛のない四方山話に花を咲かせ、新鮮な採れたて野菜を買って海へと向かう。ところが、この日は違っていた。
「ずーっと、ここにいるのかな?」
野菜を真ん中に据えて、ゆったりとした時間が流れていた。何度も通った何気ない空間で、すっかり顔なじみになった方々との語らいの中に身を委ねていた。最初で最後となった写真撮影もした。
手術後の夫を最初に迎え入れてくれたのは春の海。抗がん剤の副作用にもがき始めた第3クール終了後であった。
〝夫が再び海に抱かれる…。〟

こんな日が来ることを願ってはいたものの、まさか実現するとは思いも寄らなかった。
夫の兄や海の仲間たちがさりげなく見守る中で、ビーチに着くや否や準備体操もそこそこに、ボードを抱えてあっという間に白波の向こうに消えていってしまった。長い時間を波と戯れて戻ってきた。そこには笑顔を浮かべた少年の様な夫が立っていた。

仲間たちの熱きサポートで実現した手術後、初めての海。

〝生きている〟 という時間〝大好きな海〟 という空間〝共に波に乗る〟 という仲間
ここにも3つの 〝間〟 が存在していることを実感した。

「あんな、プカプカと海で浮いているだけでええねん…。」
夫のこんな言葉にハタと気づかされた。前向きなエネルギーを授かる 〝間〟 も大切である。しかし、人生の締め切り日を言い渡された人間にとってはそれ以上に、こだわらず、とらわれず、すべてを委ね、己を空っぽにできる 〝間〟 も必要なのだということを…。
夫に返す言葉がすぐには見つからず、そっと心で願った。

…限られた命の中で 〝海ぼうず〟 でいられる時間・空間・仲間よ永遠であれ…。(続く)