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2014年2月10日点滴ライフ?! (3) “晴れ”と“褻”

私たちの暮らしには「晴れ(非日常)と褻(日常)」がある。稲作文化を培ってきた日本人の生活様式の名残りであるという。日々コツコツと米作りに勤しむ日常が〝褻〟そんな大変な日常があるからこそ、秋の実りには皆で収穫の喜びを分かち合う祭りをする。これが非日常の 〝晴れ〟 の由来である。
点滴やチューブで支配された身体であっても、この 〝晴れ〟 を享受した歳月があった。まさしく自宅療養である 〝褻〟 からの脱出であり、「幸せや…。」と感じる貴重なひと時であった。

“晴れの実現”を かなえてくれたSF3820便

“晴れの実現”を
かなえてくれたSF3820便

「点滴をした身体で飛行機に乗れるでしょうか?」
「必ず、医師の許可書をご持参ください。」
航空会社とこんなやり取りをしたのが土曜日の朝。そうして翌朝9時にはなんと、早朝便で羽田空港に降り立っている私たちがいた。
航空会社の客室乗務員として働き出した姪の乗務姿を見ること。東京で就職して活躍している無二の親友に会うこと。このふたつを目的に、この便に乗らなければ意味がないとばかりに急いだ。抗癌剤の副作用や突然の発熱で、体調加減はその日しか判らない。
主治医から許可書をもらう間もなく、訪問看護師さんからの明確な許可を得られないまま、これぞ強行突破の弾丸ツアーであった。関空で点滴ポンプと輸液を外し、胸には点滴針を残したまま飛行機に飛び乗った。

目に焼きつけた姪の乗務員姿

目に焼きつけた姪の乗務員姿

食べ物を摂取できない身体にとって点滴は命綱である。その点滴を外しての行動は危険であり限界があるであろう。素人判断ながらそれを百も承知した上での 〝羽田5時間滞在ツアー〟。空港の展望デッキで友人と落ち合い、至福の再会を果たした。姪の乗務姿も瞳の奥に熱く焦がして、心を温めながら関空へと舞戻って来た。

点滴、排液袋をしょい込んでのキャッチボール… 大切な“晴れ”のひと時

点滴、排液袋をしょい込んでのキャッチボール…
大切な“晴れ”のひと時

無茶だけれど生涯最後の空の旅を無事に実現!
点滴のない身体に負担をかけ、与えられた天命さえも削ったかもしれない。一方では、心が躍りっぱなしの 〝晴れ〟 によって生きようとする力は大きく息吹いた。…そう信じている。
命の締め切り日までの「晴れと褻」は、夫にしか分からない、計り知れない苦しみの 〝褻〟 であり、かけがえのない 〝晴れ〟 はもう二度と味わうことができない儚い思い出と化す。いや、今の日常や非日常さえも、病状の進行によって奪われてしまう現実が待っている。

無謀であった。
勢い任せでもあった。
〝晴れ〟 を授かった歳月は、
〝今〟 を精一杯生きていた。 (続く)