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2014年2月10日点滴ライフ?! (1)看護師さんにはなれません

「点滴」は病院で受けるもの「点滴」はベッドで受けるもの。
誰しもが持つであろう 〝点滴へのイメージ〟 である。ところがなんと今の時代、家に居て「点滴」と共に暮らせるすべがある。改めて現代の医療技術進歩を、夫の 〝点滴ライフ?!〟 から伺い知ることができたような気がする。

「家での最期」を願った夫にとっては〝命綱〟 とも言うべき点滴との共生を数回に渡って綴ってみたい。

慣れぬ 手つきでの点滴準備

〝食べること〟 との決別によって、夫の身体を支えるのになくてはならない存在となったのが「点滴」であった。
年の暮れに鎖骨下静脈点滴ポートを胸に埋め込み、食事に代る高濃度の24時間持続点滴を体力温存策として開始した。
十二指腸の狭窄によって、胃にもチューブと袋が取り付けられ、まさしくチューブに支配される身体となった。
ところが、このような状態の身体で自宅療養が可能であるという。退院と共に訪問看護サポートを受けながら、我が家での点滴ライフの幕が切って落とされた。

年末年始の病院の診療休暇を直前に控え、訪問看護師さんから懇切丁寧な点滴の準備や点滴針(翼状針)を刺す指導を受けた。
いざ、自分ひとりでする段階になると恐ろしい境地に陥った。まさか人生の中で、看護師さんのようなことをするなんて思いもよらず、度肝を抜かれる心境であった。

台所に勢揃いの点滴セット

訪問看護師さんからの
点滴指導in the kitchen

悪戦苦闘の日々開始のリングが打ち鳴らされた。まず、注射針やアンプルを扱うのに自分の指を切ってしまう。
自分へのハプニングならともかく、3度目の正直も通り越してしまう程の夫の胸への針刺し失敗。回数を重ねるごとに的を突けない手技の未熟さと医療行為を軽んじてはいけないという緊張感が高まるばかり。自己嫌悪に陥りながらの精神的な疲労困憊。気がつけば、点滴針を全部使い果たしてしまい、元旦早々、針をもらいに病院に駆けつける始末。
そんなこんなで私の医療行為にナースストップがかかり、看護師さんの監視の下で針を刺す、あるいは看護師さんがする経緯に至った。正直、ほっと胸を撫でおろす自分がいた。針刺しからの解放感をありがたく享受した。
2週間に一度、訪問薬剤師さんによって届けられる大量のダンボールに入った点滴輸液やシリンジ、チューブの数々に囲まれての点滴ライフ。ネオパレン、ラクテック、ドグマチールにサイレース。今まで聞いたこともない薬品の名前ともすっかりお馴染みさん?!状態。点滴準備場と化した我が家の台所。いつもにない清潔さと小奇麗さを保てたのは「点滴」のお陰かも知れない。

今振り返ると、余命幾ばくともしれぬ身体をまな板の上の魚の如く、こんな私に預けてくれた夫の勇気こそが、点滴針を刺す私の恐怖心よりも遥かに大きかったであろう…。と述懐する自分がいる。(続く)