わいワイ がやガヤ 町コミ 「かわらばん」

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2014年2月12日第62回 三つ指母さん Sさんから聞いたお話です。

その子は隣家の庭との境目から少し離れた、木陰の窪地で鳴いていました。二階の窓から見ると時々母猫がやってきて、お乳をあげているようです。最初は2~3匹のようでしたが、しばらくすると、1匹の鳴き声だけになっていました。最初のうち母猫は、お乳をマメにやっていましたが、だんだん来る回数が減り、気がつくと赤ちゃん猫は大声で母猫を呼んでいるようでした。 ああ、猫嫌いな隣家のこと、このままではきっと保健所に連絡されると思い、ミルクを温め、カップに入れて庭に向かいました。そして赤ちゃん猫に向かって団扇でミルクの匂いを送りました。よちよち歩きのその子は隣家と境目の段差を越え、垣根をもぐり、ひっくり返りながら、ミルクの方へ一歩一歩たどり着きました。初めて手の平に入ったその子は、目はくちゃくちゃの上に砂がいっぱい入っていました。一生懸命きれいにしてあげると、ミルクを一気に飲みました。
さて、我が庭にたどり着いた赤ちゃん猫ですが、母猫がお乳を飲ませに来ています。簡単に家の中に入れる訳にはいきません。庭に段ボールでお家を作り、赤ちゃん猫を入れ『さあ、母さん、いつでも来ていいよ』と、待ちわびていたら母猫が庭にやってきました。

三つ指母さん

赤ちゃん猫は段ボールのお家の屋根に乗り、母猫と対面というその時、なんと母猫にシャーシャーと言ったのです。母猫はさっと離れ、庭から表通りのほうへ。Sさんは母猫を追いかけ『待ってください。この子を連れて行ってください』と言いました。
母猫はすでに玄関の所まで来ていました。門扉の真ん中でくるっと振り向き、きちんと座り、そして優雅に頭を下げたそうです『あー、猫も三つ指をついてお願いするんだなー』とSさんは感じたそうです。
それ以来、赤ちゃん猫はS家の猫となり今でも幸せに暮らしています。

*猫の赤ちゃんは生まれて7日で、目と耳が開き、2週間ほどで猫らしくなり、ひと月たつと離乳です。そのころ母猫は子猫達にいろいろな食べ物を与え、将来にわたる食事の好みが決定します。動物行動学の先生によると、子猫の性格は父猫に似るそうです。*生後2か月ころより社会化期がはじまり、この時期にヒトと接触しなかった子猫はヒトにはなかなか慣れません。