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2014年2月19日浅井 薫(二)

玉造署の警官浅井寛竜の次女浅井薫は、小林一三が日本で初めて少女だけの芝居を興行しようと開いた「宝塚少女歌劇養成会」を受けさせてと、父にねだります。

「学費いらんそうよ。電車もタダで乗せてくれる。踊りと歌を勉強するところで、父ちゃんの言う不良の行くとことちがう。ね、お願い。受けていいでしょ」
とだだをこねます。いつもはとても素直な子ですのに、今度ばかりはしかりつけても聞きません。

浅井薫(高峰妙子)

寛竜はおかたい警察官の中でも、石部金吉(融通のきかない物堅い男のこと)とあだ名がついたほどのコチコチですが、親バカには変わりがない。仕方なく同僚に相談すると、
「薫ちゃん、歌うまい。踊りも真似が上手や。ま、受けさせてみ」
「そやけどテスト難しいそうや。落ちたら本人もあきらめるで」
「もう13歳やろ。ボチボチ親の言うことを聞かなくなる年ごろや。女の子の反抗期はこわいで」
などと口々に言われ、渋々承知します。

試験の日、ついて行ってくれた長女が帰ってきて、
「お父ちゃん、あかん。きれいで金持ちの子がいっぱい来てた。かわいそうやけど無理」
と報告しますから、父はやれやれと胸をなでおろします。ところがなんと合格してしまったのです。姉や弟たちに抱きついてはしゃぎ回るを眺めながら、父寛竜は腰がぬけてへたりこみました。

1ヶ月経ったころ、
「お父ちゃん、月給もろた」
は、袋ごと父に差出します。あけてびっくり、7円50銭も入っています。この時代、大学の卒業生(今とちがって若者の2%ぐらい)の初任給と、ほぼ同額です。今度は父が怒りました。小学校を卒業したばかりの、13歳の小娘です。
「こんなうまい話があるもんか。おおかたはだか踊りでもやらせる魂胆(こんたん)じゃろ」
こう考えた寛竜は、そこは警察官です。非番の日に変装してこっそり養成会を訪れ、またもや目を回しました。明るいけいこ場には楽しそうな、しかも礼儀作法の正しい少女たちが、歌ったり踊ったりしていたのです。それでも合点がいきません。何度も行ってついにばれ、に大泣きされたと伝えます。(続く)