「いい加減」は「”良い”加減」
外の空気が夏のにおいに変わる頃、サンパウロの街にクリスマスがやってきます。
夏空に映えるクリスマスツリーも今年で見納め。ついに私たちにも帰国の時期が近づいてきました。
海外という言葉に全く縁のなかった私が突然地球の裏側のブラジルに住むことになり、右も左も分からず出たとこ勝負の毎日。そんな私でも1年経って楽しく過ごせるようになったのは、ブラジルの人たちの優しさと「いい加減さ」のおかげでした。
もちろんこの「いい加減さ」がマイナスになることもあります。洗濯機の修理を依頼したら、「朝9時から夕方17時までの間に行きます」と何とも幅広い時間指定をされ、挙句の果てに一日中待っても修理業者が来ないことが3回ありました。この類の話は事欠きません。日本ではありえないことが当たり前のようにあります。
でもこの「いい加減さ」に救われたのも事実です。30語くらいしかポルトガル語が聞き取れない私は、いつもお店やタクシーの中で話しかけられた会話の1割ほどしか内容を理解できていませんでした。にもかかわらず、分かったふりをしてなんとなく会話を続けていました。きっと相手には「こいつ全然わかってないな」とばれていたでしょう。それでも馬鹿にせず、何とか伝えようとしてくれる。笑いながら会話を続けてくれる。1割も伝わっていなくても「まあいいや」と笑ってくれる。そんなブラジルの人たちがいたからこそ、めげずに片言でも話してみよう、言葉以外の方法で何とか伝えてみようと前向きになれたような気がします。
スタートダッシュがそのままラストスパートにつながったような1年半期間限定のブラジル生活。全力で駆け抜けました。1年半しかないからこそ、恐らく二度と来られない遠い場所だからこそ、今までやってみなかったことにも挑戦しようと思えた時間でした。この連載もその一つです。そして今、日本から一番遠い国だったブラジルをこんなにも近くに感じることができるようになりました。
ブラジルで出会えたたくさんの人たち、そしてこの文章を読んでいただいているあなたに心から感謝!